経済学部は必要なのか(68) 二重学位や二重専攻のすすめ


二重学位や二重専攻のすすめ
 経済学部の廃止や定員削減は直ちにできないかもしれない。多数の経済学部関係者が反対することは容易に予想できる。そのこともあって、以下では第二の提案をして論を展開したい。その提案とは、「学部生は経済学だけでなく他分野も専攻せよ」というものである。経済学のほかに、たとえば法学も専攻せよという提案だ。これも大きな改革をともなうが、実現可能性は高い。大学で二つの専攻をする場合、二重学位(double degree)と二重専攻(double major)の方法があるので、まずそれぞれの定義を明確にしてから意義を論じることにしよう。
二重学位とは、経済学士と法学士の取得のように、学位を二つ取得することにほかならない。ただし今日では、同一分野の学位を(単位互換などを通して)日本と外国の大学で取得する場合も二重学位と呼ばれており、現実にはその場合のほうが多(くなり)そうであるが、これは私の提案するものと内容や目的が異なる。また、それは大学院のほうが容易であり効果も大きいだろう。私の提案する二重学位は、異なる二分野の学位の取得を意味する。
二重専攻では経済学と法学のように二つの分野を専攻するが、満たすべき単位数は一専攻の場合と(ほぼ)同一で、得られる学位は一つにすぎない。そのため、一専攻の場合と比較して、各専攻分野で学ぶ科目数は少なく、卒論が課される場合はいずれかの分野で執筆する。米国の学部学生の約四分の一がこの意味の二重専攻だ。一般的に、二重専攻者の各専攻分野に関する知識の幅や深さは、一専攻の場合より少なくなろう。二重専攻と似ているものに、主専攻・副専攻の制度がある。
ここで考えている二重学位や二重専攻は、基本的に四年間で修了するものだ。そのため学習負荷は、二重専攻より二重学位のほうが格段に重い。一般教養的な科目は共通に使えるが、二重学位は単一学位の一・七倍以上の努力を要求するであろう。二重専攻は単一専攻の一・二倍以上の努力を要するかもしれない。たとえ単位数が同じでも、学問的関連性の薄い分野を学ぶことの労力は多くなるためだ。
二重学位や二重専攻で可能な専攻内容は、大学組織のあり方に制約される。総合大学であれば、学部間に緊密な協力があるかぎり、潜在的に多様な組み合わせが可能だ。学部数の少ない大学はこの点で不利だが、学部間の協力は実現しやすい。近隣の大学の間で単位互換をすることも考えられよう。小規模大学であっても、各専攻分野の教員数を最小限にして、多様な二重専攻の機会を提供しているものも一部に存在する。
なお、二重学位を五年以上かけて達成することの有利性は必ずしも明らかでない。単一専攻で修士号を取得したほうが有利になる可能性もある(現在は五年で学士号と修士号が取得可能)。他方、広い分野に関する知識欲が旺盛な学生は、たとえ五~六年かけても二分野の学位を欲するかもしれない。本評論の主張する二重学位は、あくまで四年間で達成するものだ。

コメントをどうぞ

荒井一博のホームページ
http://araikazuhiro.world.coocan.jp/
 



コメント

このブログの人気の投稿

経済学部は必要なのか(39) 御用学者の公共心

経済学部は必要なのか(28) 勤勉で勉強好きな日本人という神話

Twitter:過去のツイートの整理 (2) 2018年(b)