平成30年1月21日 日本の山は巨大資源だ

 航空機に乗って上空から日本の国土を眺めると、そのほとんどが山であることを実感する。日本の国土の約三分の二は山地だ。しかもそのほとんどの部分は、訪れる人が極めて稀である。多数が訪れる山の観光地はほんの一部であり、地元の人々がときどき足を踏み入れる山も、山地全体から見たらほんのわずかな部分にすぎない。
 日本の排他的経済水域の面積は世界第六位とかで、最近は日本人の目が海洋にも向かい始めているが、国土の三分の二に達する面積を有しながら、今まで軽視されてきた山地にも目を向けるべきである。すなわち、その有効活用を考えるべきだ。
 日本の山には清流や滝があり、青々と茂った草木があり、小鳥のさえずりがある。少なからざる日本人がリュックを背負って山に入るのは、そうした自然を求めているからであろう。山歩きはそれらの人たちに、生命に満ち溢れた非日常的な景色、新鮮な森林の空気、生きていることの喜び、そして適度な運動と疲労を与えてくれる。山道が歩きやすく整備されていれば、毎週でも山歩きをしたいという人たちは多いであろう。
 しかし、日本では一部を除いて山の遊歩道が十分に整備されていない。地元の人しか知らない山道が多すぎる。それらを拡張し歩きやすく整えるとともに、標識や地図を充実させ、携帯電話やGPSを山中でも使えるようにすべきだ。そうすれば多数の人たちが山を訪れるようになり、日本の山地全体が大観光地に変身する。各種の清潔な宿泊施設も完備されるであろう。
 私の経験からは、ニュージーランドがある程度良好な山の遊歩道を整備していると感じた。オークランド近郊の低い山にも、また標高の高いクック山の氷河周辺にも、いくつかの遊歩道があり、普通の人たちが山歩きを楽しむことができる。
日本には広大な山地があり、植物的・地形的な多様性も大きいので、遊歩道を全国の山地一帯に張り巡らせば、質的に世界トップレベルの山歩きを楽しむことができるようになろう。もちろん、コンクリートの使用などは少なくして、自然破壊を最小限にすべきである。遊歩道の建設は高速道路の建設などと違ってローテクかつ割安であり、地元の小規模建設業者でも十分に対応できるはずだ。一日千円以下の遊歩道使用料を徴収すれば、建設費用の回収が可能かも知れない。
日本の山の魅力は世界屈指ではないかと個人的に感じている。雄大な景色を楽しめるスイスの山歩きもよいが、植物の多様性・繁茂度合いや地形の複雑性の点では、日本における山歩きの魅力のほうが勝るのではなかろうか。日本の山の自然には独特の神秘性が感じられる。日本の山地は日本庭園の拡大版ともいえよう。正確にいえば、日本庭園が日本の自然を抽象化して身近な場所に再現したのではあるが。
このように魅力的な山は世界でも稀なので、世界に向けて宣伝すれば多くの観光客も集まるであろう。日本の観光業は今以上に発展するに違いない。普通の外国人は日本の神社仏閣よりも、自然やその中での活動に関心を抱いて日本を訪れるといわれる。
日本の山地の遊歩道を整備することは多くの利益を生み出す。以上をまとめると、第一に、山歩きによって多数の日本人が日本の自然を楽しむことができ、健康にもなる。第二に、多数の外国人観光客を呼び寄せることができるはずだ。ほとんど手つかずの地が多くあるので、外国人で込み合うこともない。第三に、各地域の建設業や観光業が潤う。山は日本の巨大資源なのだ。

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